高血圧・心不全
日本では3人に1人が高血圧といわれています。高血圧は最高血圧140mmHg以上(自宅で測定する家庭血圧だと135mmHg以上)、あるいは最低血圧90mmHg以上(家庭血圧だと85mmHg以上)である状態と定義されています。
血圧の高い状態が長く続くことによって、脳や心臓など全身の血管が痛み(動脈硬化)、また心臓に負担がかかり、脳卒中、心臓発作、腎不全などの全身性の病気を招きます。

自分の血圧を把握するため、毎日血圧を測る習慣をつけましょう。家庭での血圧測定を強く推奨します!
朝晩2、3回ずつ測って、その平均値をとりましょう。測定した血圧は記録し、主治医と相談しましょう。
朝は…起きてから1時間以内(食事やお薬を摂る前です)。
・おトイレを我慢せずに済ませてから。
・1~2分座って安静にした後に、測ります。
夜は…
・就寝前に、1~2分座って安静にした後に、測ります。
高血圧の治療目標値は、年齢や他に抱えている病気によって異なります。
家庭血圧だと、若年、中年、前期高齢者(75歳未満)では125/75mmHg未満です。一方、75歳以上の後期高齢者では、それより高い135/85mmHg未満となります。
高齢になるとさまざまな臓器の機能が低下していることが多く、血圧低下が臓器の機能に悪影響を及ぼす可能性もあるため、慎重に治療する必要があります。
また、糖尿病、蛋白尿のある慢性腎臓病(CKD)にかかっている患者さんの降圧目標値はより低く、125/75mmHg未満です。
糖尿病や蛋白尿のあるCKDを合併している高血圧患者さんは、心筋梗塞、脳卒中などを発症するリスクが高いため、より血圧を下げ、これらの疾患を予防するために厳格な目標値が設定されています。

高血圧の悪化を防ぐためには
・塩分を抑えましょう。
日本人の1日平均食塩摂取量は11~12gです。
高血圧の患者さんは1日6g未満が目標です。徐々に薄味に慣れていきましょう。
・肥満に注意しましょう。
特に、皮下よりも内臓に脂肪がつく内臓肥満が、血圧上昇と関連が深いです。
・適度な運動をしましょう。
酸素をたくさん使う運動(有酸素運動)は、長期間繰り返して続けると血圧を下げる作用があります。
お勧めの有酸素運動‥ウオーキング、軽いジョギング、平らなところでのサイクリング、ゆっくりと長い距離を泳ぐなど
・ストレスや急な温度差に注意しましょう。
心身ともにリラックス状態にもっていきましょう。
寒さが血圧を上げます。冬の寒さを避ける努力をしましょう。
廊下やトイレ、浴室等も十分に暖かにし、部屋ごとの温度差を少なくしましょう。
お風呂は、熱い湯を避けて長湯せず、5~10分間入るにとどめましょう。高血圧の人は、冷水浴やサウナは入らないようにしましょう。
高血圧の治療
食事療法や運動療法で様子を見たうえで、まだ血圧が下がらない場合は、薬による治療を始めます。
ただし、血圧が非常に高い場合や糖尿病や腎臓病などの病気を合併している場合は、直ちに薬による治療を始めます。
心不全について
心不全とは、心臓の働きが低下して、体に十分な血液を送り出せなくなる状態です。心不全患者さんは増加してきており、2030年には130万人に達すると予想されています。心不全で最も多いのが、心臓の収縮力は保たれているのに、心臓がうまく拡がらず血液を取り込めないタイプの心不全です(Heart Failure with preserved ejection fraction:HFpEF)。HFpEFの一番の原因は、心臓に長期間負担をかける高血圧です。
心不全は、一度悪くなると元通りになることはなく進行性に心臓の働きは低下していきます。心不全が原因で入院となった患者さんの予後は非常に不良であり、入退院を繰り返しながら徐々に悪化していきます。進行した心不全の予後は癌より悪いとも言われています。よって早い段階で見つけて治療や生活改善を行うことで、症状の悪化を防ぎ、入院や命に関わるリスクを減らすことが重要です。
次のような症状がある場合は、心不全の初期の症状かもしれません。早めに医師に相談しましょう。
少しの運動で息切れする
横になると苦しくなる
足やすねがむくむ
疲れやすく、元気が出ない
HFpEFの早期診断は、心臓エコー検査など画像検査では難しいことが多く、「BNP」の測定が有用と言われています。「BNP」とは心臓がストレスを感じた時に血液中に分泌されるホルモンで、心不全の進行を早期に察知することが期待される血液検査です。当院でも心不全の可能性のある患者さんには、積極的に「BNP」検査を行っています。